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2015年12月29日(火)
『アウトロー・ワンダーランド』特設サイト 06 青海節子

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~お嬢様の野望~

著:田中ロミオ

キャラクターデザイン:saitom

 

青海セツは17歳。すべてを持った少女だった。
富、血筋、学歴、能力、容姿……セツはそのすべてを生まれながらに持っていた。
だから自分は優れているのだと信じていた。
またセツは高二であるが、あの思春期の病気を引きずっていた。
そのため「支配者」とか「頂点捕食者」とか「高貴なる存在」といった単語に強く反応し、自分こそがまさにそのような人間であると悦に入っていた。
父親の書斎に忍び込んでエグゼクティブチェアーに背を預け、ぶどうジュースをなみなみと注いだワイングラスを揺らすことさえした。人に見られたら自殺ものだ。
そんなセツだが、学校では優等生だ。
成績だけではなく素行にも気をつけており、ハイソな振る舞いに怠りはなかった。凛々しい感じをうまく出せたので、下級生からの人気もあった。
そのうち承認欲求が強まってくると、大勢の人に一目置かれたいと感じるようになった。
ただルックスが整ってるとか金持ちである、といった生まれに左右される部分ではなく、自分の手で成し遂げた実績や精神性を尊重されたいと願った。要するに武勇伝が欲しかった。
そんなある時、セツは校内でひとりの下級生と知り合いになった。
今にも死にそうな顔で廊下の隅に立っていたので、気になって声をかけたのだ。少女はすぐに食いついてきて、あまりお嬢様らしからぬ口調でぺらぺらと事情を説明した。
「よっく聞いてくれました! 実はあたし、こないだ修学旅行費を落としちまってー」
「まあ、それは難儀ね……」
「難儀も難儀、大難儀なんでさー! なにしろこの学校の修学旅行費と来たら高いのなんのって! や、こんなトコに通っちゃいますがね、うちの家計も最近は火の車で……とてもとてももう一度ゼニを出してくれたー言えねーもんで……はあ、ほとほと困り果ててます」
お嬢様学校である。修学旅行費も馬鹿高い。ぶっちゃけると月額三十万である。
上級家庭でありなが台所は火の車、というのはよくある話。もちろんセツの家は正真正銘、売るほど金がある側だが、家が傾いても今までの生活水準を落とせないという気持ちはよくわかるし同情する。見下すが。
「いいわ。私に任せてちょうだい。これで足りて?」
セツはその場で財布から十万円の束を三つ引っ張り出す。下級生が目をむいた。
「お嬢さんみたいな方が、札をズクで突っ込んでるんですか?」
「え、ズクって?」
「えっと、札を九枚重ねて、一枚で挟んで十枚セットにするのをズクって言うんでさー。あんましお上品なやり方じゃあねーもんで、こんな学校の生徒さんがそんなやり方しててびっくりしました」
「上品ではない……の? 知らなかった。単に便利だから束ねていただけなの」
事実なら、今後は注意する必要があるだろう。
「それより受け取って。気にしないで。可愛い後輩のためよ」
少女の目がきらりと光った。
「実は! クラスメイトの給食費も預かってまして……」
「そ、そうなの? さすがに高校生が貸すにしては大金になってくるわね……」
セツの小遣いは月六十万だが、今月分をすべて放出してしまうことになる。いろいろと不自由になってしまう。
「きっと帰します! 来週の放課後までにはゼニを作って、ここでお返しします!」
「そう、それなら結構よ」
セツは札束を追加で三つ抜いて渡した。
「ありがとうございます! このご恩は忘れません! それじゃあ来週、この場所で!」
少女は廊下で大声で感謝の言葉を述べてくれたので、大勢の通行人の目にとまり、とても気分が良かった。いいことをした、という気になれた。満足した。
そして一週間後、少女は結局現れなかった。
セツはちょっと悲しかったが、高貴な者の義務として我慢した。

ある時、知らない番号から電話がかかってきた。
「はい、青海です」
『ああ、良かった! お願い、助けてちょうだい!』
「え? どちら様でしょう?」
『私よ私!』
「えっと……九條のおばさまですか?」
『大正解よ! 九條です』
声が少し違うような気がするが、しばらく会っていないのだからこんなものだろう、とセツは思った。
「ご無沙汰してます。それで、本日はどうなさったのですか?」
『ごめんなさいね、ひさしぶりなのにこんなことお願いしちゃって。実は今、外出しているのだけど、財布を盗まれてしまったの』
「まあ、それは大変ですね! お車ではないのですか?」
『ええ、思うところがあって電車を使ってみたの。携帯もなくて、公衆電話なのよこれ。記憶を頼りにあなたに電話をしたの。この番号しか思い出せなくて……歳をとるっていやなものね』
「いえ、わたしの番号を覚えていてくださって嬉しいです」
セツの記憶を、九條のおばさんに遊んでもらった懐かしい記憶が駆け抜けた。
『今はホテルにいるのだけれど、明日の宿代もないの。悪いのだけれど、少し都合していただけないかしら?』
「わかりました! どこにお持ちすればいいですか?」
『振り込んでくれればいいわ。口座番号を今から言うから。私が副業で営んでいる会社の口座なので混乱しないで』
「わかりました! すぐに手続きいたします!」
セツはインターネットバンクから、指定された口座に50万を振り込んだ。
『ありがとう、本当に助かったわ! 少し借しておいてちょうだいね! 明日の夕方には家に戻るから、すぐにお戻しするわね!』
一週間後、セツは遠縁にあたる九條家の倫子夫人に連絡をとった。夫人は生まれてこのかた電車で遠出などしたこともないし、外出はいつも7シリーズだし、金も借りてはいないと言う。
セツはちょっと困惑したが、高貴な者の義務として我慢した。

 

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2015年12月29日(火)

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