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2015年12月29日(火)
『アウトロー・ワンダーランド』特設サイト 05 馬 子燕

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~チャイナちゃんシンドローム~

著:田中ロミオ

キャラクターデザイン:saitom

 

馬という中国人などそう珍しくはないが、この町で馬燕(マ・イェン)という名を軽々しく口にできる者はいない。
馬燕の商売は、表向きは美術商ということになっている。それも半ば隠居の身、ということになっている。実際はどうなのか、とは誰も問わない。その好奇心を満たそうとすれば命を掛けることになる。
馬燕は、所狭しと物が押し詰められた薄汚れた店内に小柄な体を押し込んで、うち捨てられた神像のように静かに日の大半を過ごす。まるで彼女自身がひとつの商品のように。
「お祖母ちゃん、お茶だ」
盆に茶器をのせた少女が、音もなく店に現れた。
「お祖母ちゃんと呼ぶんじゃない。他人のように名で呼びな。そう言いつけたろ」
「ごめん……馬燕」
馬小燕(マ・シャオイェン)は身を縮めた。
馬燕は手にした煙管の雁首の部分で、目前のろくに隙間もない平面を叩く。カウンターがわりの文机だが、無秩序に積まれた品々によってほぼ卓としての用をなしていない。皮肉なことに手紙を書くほどの隙間もなく、茶を飲むわずかな空間だけがこじ開けられていた。
少女は手際良く茶の準備を済ませると、視線をちらりと積まれた品々に飛ばす。そこから視線を感じたのだ。
唐三彩の馬や青磁の壺や白毛の払子などの隙間に、周囲とはずいぶん製造年代が異なるであろう高感度カメラが隠されているのを見つけた。もちろん売り物ではあるまい。
「見るんじゃないよ。そういうのでバレることもあるんだ」
「ごめんよ……つい」
同じものが、店内には何カ所も設置されていると感じる。カメラの向こうには、モニタールームに待機している男たちの目があるはずだった。襲撃に対しての備え。身内がチラチラと気にしていたら、敵に情報を与えかねない。ここは馬燕にとっての要塞なのである。
この歴史ある建物を馬燕が買い取った理由は、単に頑丈であるからだと聞いた。馬燕が信用するものは全てそうだ。頑丈。タフ。強靱。
長姉がそう。次姉がそう。亡くなった母もそうだし、叔母たちも。一家を切り盛りする、たくましい女たち。小柄で非力で才に乏しい小燕は、祖母のもとで家事手伝いをするくらいしか身の立て方がない。一族の落ちこぼれ。
「もうお行き。午後は語学の勉強、怠るんじゃないよ。見てなくたって、私にゃわかるんだからね」
「わかってる、馬燕」
店を出ても、薄ら寒い気持ちは消えなかった。
監視カメラだろうが生身の視線だろうが、見られていると落ち着かない。
店を出ても悪寒は消えない。つまり監視者がどこかにいる。もちろん引き返して祖母にそのことを警告するような愚は犯さない。そんなことをしたら、本当に見捨てられてしまう。
抜け目のない馬燕のこと、この程度の雑な殺意には気づいているはず。そう信じて、小燕は不安げな足取りで家への道をたどった。

 

この続きは「電撃G’sマガジン」2016年1月号に掲載!

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2015年12月29日(火)

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