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2015年12月29日(火)
『アウトロー・ワンダーランド』特設サイト 04 瀬戸内光子

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~汝、崇めるべからず~

著:田中ロミオ

キャラクターデザイン:saitom

 

瀬戸内光子には幼い頃から、不思議な力があった。

「……あっちにある」
「あったよ、あった! ピカちゃんすごい!」
失せ物の写真を見て、なんとなくありそうな方向を指さすと、実際にあったり。
「……これがアタリ」
「おめでとうございまーす! な、なんと特賞の、ハワイ旅行でーーーーーす!」
くじ無双してしまったり。
「……そこに小判」
「わあああっ! あった! 本当に財宝埋まってたーーーーっ!?」
埋蔵金の場所を言い当ててしまったり。
光子には超能力があるのか?
そうではない。偶然である。
ただ単に、徹底的にたまたま、そういうことが重なったに過ぎない。
当時、彼女……瀬戸内光子は児童養護施設で暮らしていた。
違法施設、であった。
国の許可なしに勝手に児童を引き取っていた。対象は無戸籍の児童。
生まれたものの出生届を出されず、戸籍から漏れている子供は、実のところかなりの数がいる。貧困層の子であったり、望まれぬ子であったり、事情は様々だ。
そうした可哀想な子供たちを施設は慈しみ深く保護している……わけではなく、単に稼ぐためだ。
施設が光子の超常的な偶然力に目を付けたのは、当然のことであった。
結果誕生したのが無認可児童擁護施設『手続き簡単しあわせハウス』改め無許可宗教団体『基本無料しあわせの会』である。
そう、かの悪名高き『基本無料しあわせの会』なのだ。
何年か前にテレビでバンバン放送され、お茶の間を戦慄させた、あの。

「……以上、当会の誇る聖少女ユニットSSJ48の見事な演舞(ライブ)でした! しあわせ、ありがとうございました! さあ、それでは皆さんお待ちかね、基本無料しあわせの会の聖務会長を務めておられますヒカリコ様のおなーりー!」
司会者がマイクを手に大仰に煽ると、舞台袖から御輿にかつがれた光子が厳かに登壇した。
聖務会長とは事実上の教組のことである。教組様に祭り上げられた光子は、ジト目が似合う可憐な少女へと育っていた。
「どーもー」
光子が気の抜けた声で挨拶するや否や、会場に集まった大観衆は歓喜の声をあげた。
喜びのあまり泡を噴き、失禁していてる者さえいた。イカれていた。
ライブも可能な大型ホールを貸し切りにして、音楽会やら討論会やらレクリエーション会などの文化活動を通じて“しあわせ”を模索するという謎の新興団体『基本無料しあわせの会』の前身が、違法組織だと知る者はもはやほとんどいない。今やその組織は、日本全国津々浦々に五万人もの会員を抱える巨大宗教法人へと変貌している。
その聖なる象徴こそが、今、壇上に立つ瀬戸内光子その人である。
不可能界を打破し御赦免光を招じ入れる観音力を持つとされる奇跡の少女、という触れ込み。
当初わずか30名程度に過ぎなかった同会が、数年のうちに会員数五万人にまで達したのは、光子の神通力めいた幸運によるところが大きい。
「それではヒカリコ様、本日の御教えをお手元のフリップにお書きください!」
バラエティ番組ノリで光子はフリップに教えを書く。
内容は、初期には自分で決めていたが、そのうち幹部たちが台本を書くようになった。今日はこんなことを書かされた。
『ご来場の皆様への感謝を込めて、本日しあわせキズナフェス緊急大開催! 霊験あらたかゲリラおみくじでは、壺・宝塔・護符出現確率超絶3UP!』
会場が沸きに沸く。
超絶3UPということは、通常当選確率が0.5%程度のレア霊感アイテムが、1.5%で出てくるおみくじということ。会場に居合わせ者は誰もがこう思った。
なんとオイシイ!
この会ならではのおみくじ形態では、当たると護符などがもらえるというシステム。一回たったの三千円。
「ピカ様ぁぁぁぁ! アリガトォォォォォッ!」「アリガトォォォォッ!」「嬉しくて漏れちゃうぅぅぅぅぅっ!」「感謝ぁぁぁぁぁ!」「マジで嬉しいぃぃぃっ!」「絶対しあわせになりますーーーーっ!」「ヒカリコ様ぁぁぁぁぁっうおおおおっ!」
会場は狂騒のるつぼと化した。
このように、『基本無料しあわせの会』は初期費用はほとんどかからないと謳いつつ、奇跡をエサに人心を惑わし、高額のおみくじを果てしなくひかせる悪質な商法で莫大な富を稼いだ。この世の春であった。
だが摘発された。
近年評判を低迷させていた警察は、この降ってわいた名誉回復の好機に大ハッスル。違法捜査・微罪逮捕もなんのその。
マスコミも負けじと連日この出来事を扇情的に報道。真実を暴く権利を徹底的に行使し、未成年だろうが被疑者だろうがお構いなしに実名・プライベート・性的傾向を垂れ流した。
大衆は気持ち良く怒り狂った。
社会の異物、許すまじ。道から外れた者、許すまじ。
それらの白羽の矢は、当然組織のカリスマである光子に向けられることとなる。
人々は一度もメディアに姿を見せない光子を血眼で追い求めた。邪悪の象徴である彼女をメディア上でズタズタに引き裂くまで、大衆の怒りは収まらないのだ。
だが熱烈な側近信者らがこれに抗った。
「お逃げください、ヒカリコ様!」
「……逃げるとはどういうことでしょうか。現実逃避をしろということでしょうか?」
ピザまんをもぐもぐ頬張りながら、気の抜けたことを言う。
人造カリスマとして温室栽培されたヒカリコは、現状認識能力は極端に乏しいのである。
「ここは危ないですから安全な場所に逃げなければならないのです!」
「……安全とは何でしょうか。安さが全てという意味でしょうか?」
実は義務教育さえ受けてはいないのである。
「どこだぁアイドル教組ぉ! 暴く権利を最大現行使して、動画をネットにアップしてやるぞぉぉぉっ!」
怒号が近づいてくる。側近は慌てた。
「いけない、スネークがついにここまで! ささ、この隠し穴からともに脱出を!」
「……スネークとは何のことでしょうか。愉快犯的に社会正義を振りかざす潜入工作員のことでしょうか?」
「なんでそんなところだけ正解……とにかく今はお逃げくださいっ!」
こうして光子は流転の逃亡生活に突入したのである。

 

この続きは「電撃G’sマガジン」2015年11月号に掲載!

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2015年12月29日(火)

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