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2015年12月29日(火)
『アウトロー・ワンダーランド』特設サイト 02 御宿陶子

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~女子中学生活人剣~

著:田中ロミオ

キャラクターデザイン:saitom

 

「青磁、今日は庭でバーベキューだ!」
「やったねパパ! ぼく、バーベキュー大好き!」
子供の頃は、楽しい家だった。
今、中学二年生の陶子はそう記憶している。
若々しい両親と、三つ上の兄と、自分。絵に描いたような幸福な四人家族。
笑いの絶えない家だった。
……今は、冷蔵庫の中みたいに冷え切っている。

ふたりがまだ小学生だった頃、御宿家はあたたかかった。
「御宿さんの家って、コマーシャルに出てくる家族みたいですね」
自宅に招いた父の同僚が、憧れるようなまなざしを一家に向けた時、両親は心から満ち足りた顔をしていた。
だが理想的家族像の子供役というのは、楽なものではない。
複数の習い事に、連日訪れる招待客へのご挨拶、休日は家族で出かけるか自宅でホームパーティー。
理想的家族を維持するため、それだけのスケジュールをこなさねばならなかった。
とても大変だった。

とある夜、トイレに起きた陶子は、リビングからもれる両親の話し声を耳にする。
「うん、青磁は運動も勉強も得意な子供になってくれそうだな。俺によく似てくれてホッとしたよ。陶子の方は……勉強はちょっと苦手か? 塾には通わせてないから仕方ないか」
「でもあの子、きれいに育つと思うわ。女の子はそっちのが大事。性格がちょっと大人しすぎるから、うまく矯正してあげなきゃね」
学期末の夜、成績表を眺めながら両親はそんな会話をしていた。
小学生の陶子に、意味はよくわからなかった。
褒められているような気もするが、なぜかほんの少し、息苦しかった。

時が流れ、青磁は中学生になった。
中学生になると部活動がはじまる。
部活の決定。それは子供にとっての一大イベントである。
子供が自分の意思で選択すること求められる、貴重な機会なのだ。
ところが。
「お父さん、俺、本とか好きだしやっぱり文芸部がいいんだけど……」
「文化部はダメだとあれほど言ったろう? せっかく運動得意なんだから、もっと人生のためになるスポーツ系にしなさい」
「……じゃあ卓球部?」
「どうして地味そうなものにばかり興味を持つ?」
父は息子を懸命に説得する。
根暗な部活はいけない。中学高校では運動部に入らないと終わる。人生の勝利者になるために、もっと良い部活を選びなさい。この一覧表を見なさい。

■部活動評価一覧 作成・父
【運動部】
・サッカー部(A+)最良の選択肢、父も元サッカー部(Point!!)
・野球部(B)悪くはないが、ファッション性に乏しい
・バスケ部(A)良い部類、サッカー部が無理ならこっち
・バレー部(C+)地味であり、人生のプラス効果は期待できない
・テニス部(C+)悪くはないが少し軽薄に見られてしまう
・陸上(C)地味な上、個人競技。得るものが少なく、避けた方が無難
(略)
【文化部】(D)
すべての文化部は人生の損失なので入部は許可できない
(補足)すべての運動部についてレギュラーを取れるなら評価は+1ランクとする

「どうかな青磁、よくわかったろう?」
父親はこんな一覧を作ってしまったことを、少しも恥じていないようだった。
「輝かしい青春を過ごしたいなら、この一覧で推奨されている部に入らなきゃな」
「…………うそ」
陶子はまだ小学生で関係がなかったが、隣で質問してみた。
「……お父さん。私もサッカー部でないとダメ?」
「いや、女の子の勝ち方は別だよ。むしろスポーツの才能がありすぎる方が、人生が遠回りになる。そうだな、いっそ部活には入らず、習い事を増やすとかが良いかな」
「…………そう」
やっぱり、よくわからない。
親の打算子知らず。

 

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2015年12月29日(火)

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