
現在、Blu-ray&DVDシリーズが好評発売中のTVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』。
監督の井畑翔太氏と原案・シリーズ構成の渡 航氏の対談は中盤へ投入!!
井畑監督に対し「もう、意味がわからないと思った」と率直な感想を伝える渡氏。一方、「渡さんの前では言いづらいですが……」と監督からの爆弾発言も!? いまだかつてない本音のクリエイター対談、ファンならずとも必見です!
第2回
「●●だけは好きに決めさせてほしい」井畑監督のこだわりが詰まった第1話を解説!
万葉と百花が踊った第1話の特別OPテーマは
ダンスのために井畑監督がこだわって発注!!
――本作は千歳を中心とした人間ドラマが魅力的に描かれています。今だから語れる制作秘話や、物語の構成で特に心がけていたことを教えていただけますか?
井畑:千歳が初お披露目となる第1話はもちろんのこと、沖縄旅行を描いた第6話、万葉が山形に帰省する第8話は、脚本段階から外せないエピソードだという認識でいたので、かなり力を入れました。
その中でも、第1話は特に大変でしたね。この作品は「千歳ががんばらないと世界が滅ぶ!」みたいな、アクションシーンがあったり明確な敵が登場したりといった派手なお話ではありません。でも視聴者の方には「続きが観たい」と思ってもらえる作りにしなければならないので、手を抜いて気軽に作れるシーンはなく、演出的にも作画的にも細部まで気を使いました。
渡:そうですね。登場人物たちが密室でしゃべっているような時間が長いので、単調な場面にならないような、絵コンテや演出技術が必要でしたから。
井畑:第2話は松竹(徳幸)さんに作っていただいたPVだったり、第3話は千歳役の千本木さんの芝居だったり、どの話数にもインパクトのあるネタを用意してあったんです。でも、渡さんの前では少し言いづらいのですが、第1話は「千歳が出てきた」ということ以外に大きなイベントが起こらない回でした。だからこそ「これだけは!」とお願いしたことがあって……。
渡:百花と万葉のダンスシーンですね。「第1話冒頭のダンスシーンの曲だけは、好きなように決めさせてほしい」と。
井畑:そうです。本作の楽曲については、歌詞も音楽のディレクションもほぼすべて渡先生にお任せしていました。でも、「僕が気に入る曲じゃないと、ダンスシーンは描きません!」と頼み込みました(笑)。
渡:ダンスの作画が映える楽曲にしようと、井畑監督が特にこだわって発注した1曲になりましよね。
井畑:ええ。歌のテンポやピッチまで細かく調整してもらいまして、完成したのが第1話の特別OPテーマ「決意のダイヤ」です。今のご時世、かわいい女の子がアイドル衣装を着て歌って踊るシーンは、他の作品でも結構観られますよね? そんな中で別のインパクトを与えられないと、数ある作品の中で目立つことができないと思ったんです。ありがたいことに、第1話は多くの方からご好評をいただいたようで、胸をホッとなで下ろしました。
渡:作画スタッフさんがこだわってくださったおかげで、完成度の高い第1話になりました。僕の予想以上にファンのみなさんに好評で「なぜなんだ?」と首をひねったほどです。脚本的にオリジナルアニメの第1話として、あれが正しかったのかというのは別な話ですが……。
井畑:ちょっとマニアックな話になりますが、実は第1話はとことん作画的に厳しいレイアウトを作っているんです。たとえば、代官山の駅で手前に千歳がいて、百花が奥にタッタッタと移動しながら「千歳はもう出番、ないかもね」というシーンがありますよね?
百花は千歳の横でふつうに歩かせてもよかったんです。なのにあえて、ちょっと坂のある代官山駅で、上から俯瞰した構図で、小走りで奥に移動していく百花を振り返らせました。これは作画的には相当にキツイんです。下り坂を走る絵を描くだけでも大変なのに、ちょっと俯瞰の広角気味のカメラで足元を映すとなると、足の接地面がずれないように描かなければいけないので……。
あとはアバン(※OPの前に挟まれるシーン)に登場した、舞台挨拶の裏側でタオルを持った女性スタッフが、手前に向かって走ってきて振り向くシーンとかもですね。
渡:確かにあの走っていくシーン、気合入ってましたよね。ここで作画力、使うの? もう意味わからないと思いましたよ(笑)。
井畑:あのあたりの動きに関しては、ほぼ自分で手を入れさせていただきました。総作画監督の木野下(澄江)さんからも「これ、なんの意味があって、こんな(作画的に)キツイことするの?」と問い詰められたんですけど(笑)。あれは半分が気合、半分が自慢で完成したシーンですね。「僕らスタッフは、これだけ力を入れてこの作品を作っています。これだけのものを表現できますよ」というアピールを最初にしておくべきだと思ったんです。昨今の視聴者のみなさんは目が肥えているので、手を抜いたところは一発でバレてしまいますから……。
そんな感じで、第1話は焼肉を食べるところから最後まで、ただ登場人物たちがしゃべるだけではなく、絵的にも観ていて気持ちいいタイミングを作画で表現していきました。横の動きじゃなく、描くのが難しい奥行きのある動きをちりばめたので、作画スタッフ的には地獄の第1話だったと思います。
渡:そうですね。会話劇がメインなのに、やたら奥行きのあるカットが非常に多くて。観ていてとても気持ちよかったですけど。
井畑:あっという間の30分だと思ってほしかったので、可能なかぎりストレスのないように画面を作ったつもりです。
渡:僕も第1話を観た時、「このアニメ、ひょっとしておもしろいのでは?」と思いましたね(笑)。そもそも、僕の書くお話ってアニメ作品に向いていないんですけど、非常によくできたなぁと客観的に驚きました。
▲ディオメディアのアニメーター陣の実力を見せつけた、百花と万葉のダンスシーン。音楽と作画が完全にシンクロするようこだわって作られました。もちろん、手描きです!!
Posted at 2017.3.28 | Category:G’sマガジン, アニメ, ガーリッシュ ナンバー