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2015年12月29日(火)
『アウトロー・ワンダーランド』特設サイト 01 嵐山まー子

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~それでもまー子は生きていく~

著:田中ロミオ

キャラクターデザイン:saitom

 

金なし、家なし、家族なし。いわゆる若年ホームレス。
それでもまー子は生きている。
「ひのふのみぃ……たったの三つたー不作だねー!」
夕日に染まる雑居ビルの屋上、足つき給水タンクの上で、まー子はあぐらをかいて本日の少ない”獲物”にため息をつく。
数も少なければ、中身も少ない。
三つの獲物……財布の中身は、総額三千二百六十二円。
たったの三千円!
「トホホって感じ」

仕事をした日は、贅沢をしたいものだ。
本来なら義務的教育を受けているはずのまー子だ。贅沢と言えば、メシに宿のこと。
三千円なら、一日腹を満たして、ネットカフェのナイトパック利用できれいになくなる。
そうしたら翌日にはまた仕事に行かねばならなくなる。
慌ただしいことこの上ない。
「ってことでここはいっちょ残業と参りますか」
ぱちん、拳を打ちつける。
少女は体重をまったく感じさせないアクロバティックな動きで、タンクを支える高架を“転がり”降りていく。
ハシゴを回転しながら降りる昔ながらの玩具があるが、それを思わせる動きだ。
まー子は小動物並みに身が軽い。
ちょっとした家屋やビルなら、よじ登って上り下りすることは容易い。
給水タンクを支える高架からビルの壁面に。そこから別のビルに飛び移る。庇から手すりに、窓枠からまた壁面に。自由自在に空中歩行する。
師から黄金の指と讃えられた、常人離れたした才能だ。
人通りの多い商店街付近の地上に、音もなく降り立つ。ここからは地上の移動だ。
「狩猟解禁」
不敵な笑顔を作る口元を、マフラーで隠した。
狩りはシャバではハンザイと呼ばれる行為だ。
だが面白半分のバカッター的なハンザイとは異なる。
生きるためのハンザイなのだ。
――ゆえに容赦はせぬ。
まー子の目がぎらりと光る。獲物を見定める目。さっそく見つけた。いかにも金持ちそうな女性。ブランドものを身につけ、しゃなりと歩く大人の女。
「うむ。ちょーかっこよろしい。えへぇ、憧れちまうねー」
セレブ度が高いからには金持ちのはず。
まー子は群衆にまぎれて女に近づいた。
黄金の指は壁を掴むだけのものではない。電光石火、バッグからサイフを抜き取った。
その一瞬の手さばき!
卓越したスリの才能。これこそが黄金の指の真価であった。
さっそく路地裏でサイフの中身を確かめた。
「……八百円ってオイ」
まー子にはわけがわからなかった。
「セレブが……おぜぜ持ってないたぁどういうこった……」
実はわりとそうなのだ。雰囲気セレブは全力で見栄を張る。そのブランド代たるやハンパなものではない。けっこう暮らしはギリギリなのが実状だ。
「どっかに金持ちでも落ちてないもんかね」
まー子はスリの腕はバツグンに良い。だが人を見る目がなかった。だからいい獲物に出会えることなどほとんどない。獲物運が悪いのだ。
壁に背を、しばし通りを眺める。
歩いて来た母娘に目がとまる。娘は五歳くらいだろうか。
「ママー、あれ食べるー、はんばがー」
「ミヨちゃん、帰ったらすぐ晩ご飯だから、がまんしよっか」
「……がまん?」
「そう、がまん。ハンバーガーは今度ウチで作ってあげるから」
「ママのハンバーガー、一番好き!」
仲むつまじく、ふたりは歩いて行った。
たやすい獲物だったが狩る気にはならなかった。スルーしてしまった。
(母親……か)
今まで深く沈んでいた幼少期の記憶が、不意に甦る。
あまりにもあやふやだった幼い頃の記憶を、まー子は気まぐれに辿った。

 

この続きは「電撃G’sマガジン」2015年9月号に掲載!

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2015年12月29日(火)

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